言語と音楽の哲学
木下 頌子(きのした・しょうこ)
2010.09.23現役の哲学の学生さんである、木下頌子さんのご自宅に伺いしてきました。木下さんは、哲学とは別の学部から、慶応義塾大学大学院の修士課程に進学され、現在言語哲学と美学を学ばれています。インタビュー当日の天気は大雨で落雷もあったのですが、外の雨の気配を感じさせない、防音壁に囲まれた、木下さんの日常の空間がそこにありました。哲学書に書かれてある内容について饒舌に語ることと、譜面に書かれてあることを情感を込めて表現することとは、いったい何が違うのか、同じなのか。哲学や曲を理解するとはどういうことなのか。そんなことを考える楽しい時間になりました。ショパンのエチュードop.10-10から始るインタビュー、どうぞお聴き下さい。インタビューの最後で木下さんがご紹介されている美学の研究会については、下記のグーグルグループのページからオーナーにご連絡下さい。開催場所は東京大学本郷キャンパス美学研究室で、日時は不確定、内容はWolheim,Scruton,Daviesなど現代美学の基本文献の読解です。

(田中)
哲学の生態に迫るウェブ・マガジン『Philosophy Zoo』。こんにちは。「哲学
ラジオ」のコーナーを担当します、インタビュアーの田中紗織です。
えー、最近はですね、関東地方、一雨一雨、気温が下がってまして、秋らしい
日が続いているんですが、そんな季節にぴったりな方に、今日はお話をうかが
いに行きます。現役の哲学の学生さんである、木下頌子さんです。木下さんは、
えー、哲学とは別の、本当にまったく別の学部から、慶應大学大学院の修士課
程に進学されまして、現在、分析哲学と美学を学ばれています。もともとのご
専門についてはですね、インタビューの冒頭で明らかになる予定なんですが、
えーまあおそらく、あとでお部屋の様子を撮影させていただいて、ホームペー
ジからご覧になっている方はですね、その写真を見て、ご想像がつくかもしれ
ないんですけれども、とてもすばらしい特技をお持ちの方なので、度肝を抜か
れてですね、こちらも言葉を失わないように、木下さんご自身と研究対象の魅
力を引き出していきたいと思います。それではさっそく行ってみましょう。
[ショパン作曲、エチュード、op.10-10の演奏]
(田中)
はい、あらためましてインタビュアーの田中です。木下さん、今日はよろしく
お願いします。
(木下)
よろしくお願いします。
(田中)
さきほどは、本当に、すばらしい演奏をお聞かせいただいて。私もこんなに近
くで、ピアノの演奏を聞いたのが始めてで、あのー、自分が鍵盤の延長線上に
いていて、自分のこう脈拍だとか、心拍だとかそういうものとして音を聴いた
感じがして、身体を弾かれているという感じがあって、本当にすばらしい体験
をさせていただいてありがとうございます。あの、こういうですね、演奏活動
というかピアノを日常生活のなかで練習されていて、あのー、哲学も、その生
活のなかで、活動としてやられているというなかでですね、私は心配してしま
うのがあるんですけれども、哲学やりすぎてピアノが意味が分からなくなって
しまうだとか、そういうことってないんですか。
(木下)
あーそうですね。あのー、哲学をやることによって指が動かなくなるっていう
ことはぜんぜんなくて、あのー、なんかこう、ぜんぜん、自分のなかで、違う
筋肉を使っているような。
(田中)
違う筋肉(笑)。
(木下)
なんか本当に、ぜんぜん、別の状態で分断されているので、うん、それは、な
いんですね。ただその、時間が、いままで弾いていたのよりも、減っているぶ
ん、ちょっと指が動かなくなるとか、そういうことはあるかもしれないんです
けれども、哲学によって、…、そのなんか、弾くことに影響を与えるというこ
とはないかなあと思います。
(田中)
考えすぎちゃって指が動かなくなるっていう、リアルタイムで哲学が邪魔して
いるっていう感じはない。
(木下)
あ、そうですね。うん。それはなんか、ぜんぜん、違う状態にあるので。
(田中)
精神状態もぜんぜん違いますか。
(木下)
そうですね。うん。本を読んでいるときっていうのと、そのー、指を動かして
音を聴いて、っていう状態と、まったく別の状態です。
(田中)
動かしている筋肉も違えば、精神状態も違う。
(木下)
そうですね。
(田中)
じゃあ、逆にこう、哲学だったりピアノだったりに、おたがいにいい関係だっ
たりするっていうことはあるんですか。
(木下)
あー、そうですね。あのー、なんかこう、生活にこうリズムができるというか、
その、まったく違う活動を、なんかこう交互にやっている感じなので、ま、リ
フレッシュもできますし、お互いに、その、そこに取り組んでいる時間に、す
ごくこう集中できる感じがありますね。
(田中)
さきほど、お手洗いをお借りしたときに、あのー、メモがいろいろ貼ってあっ
て(笑)。あのー、古典論理式だったり、ドイツ語の活用のメモだったりがあって。
前は譜面だったんですか、やっぱりあれは。
(木下)
そうですね(笑)。前、譜面、なんかあのー、バッハの譜面とか、コピーして、
暗譜をするのに置いてましたね。
(田中)
そのスペースがいまは、ドイツ語の。哲学の文献を読むために必要なものがあ
るんですね。そうするとぜんぜん、対象が重要なものとして変わってしまった
ということですよね。生活空間が違ってきているということですよね。いまあ
の、ワンルームのお部屋にお邪魔しているんですけども、部屋の半分、四分の
一くらい、グランドピアノが占めてまして、あと半分くらいは哲学の、空間的
に、本と机とあって、空間で見ても哲学のほうが大きい、同じくらいですかね。
(木下)
ピアノが大きいので、空間的には占めてますけど。
(田中)
それで残りは、キッチンがある。
(木下)
そうですね(笑)。
(田中)
時間的には、一日の配分としてはどうですか。
(木下)
あーそうですね、やっぱりいまは、哲学のほうが圧倒的に多くて、やっぱり学
校にも言っているし、そこでまあ、授業の予習だったり、自分の専門の勉強だっ
たりをしているとやっぱり、ほとんど一日終わってしまって、で、残りの時間
でピアノを弾くという感じで。休みの日とか、いま夏休みに入ってからは、ちょっ
と、ピアノも、そうですね、4、5時間とか、弾けるときは弾くんですけれども。
(田中)
なにかこう、お友達とかの関係で会話の質も、音大にいらっしゃったときから、
哲学を学ばれている方たちの集団に移られたということで、会話の質もぜんぜ
ん変わってそういう意味では生活も違ってきているように、想像するんですけ
ど、実際どうですか。
(木下)
あ、そうですね。それはすごく変わったと思いますね。あのー、雰囲気からいっ
ても、こう、音大にいたときは、女の子がほとんどで、でもいまのえーと哲学
科は、ほとんど男の方ばっかりで。
(田中)
割合としても逆転ですよね。
(木下)
そうですね。逆転しましたし、会話の質というとそうですね、
音大のときは、まあ女の子だからなのか、そういう音楽をやっている
からなのか、分からないんですけども、なんかちょこっと言ったこと
で、「あ、そうだよね、分かる」みたいな(笑)。お互いにこう。
(田中)
言わなくても、あうんの呼吸というか。「だよね」っていう感じで。
(木下)
伝わっちゃう部分とかあったんですけど。
(田中)
テーマもやっぱりピアノとか、そういうテーマが多いわけですよね。
(木下)
そうですね。うん、あの、「ピアノのこういう感じの音がいいよね」とか「こ
ういう音出したいな」とか「あの作曲家のあそこの小節とか転調とかいいよね」
みたいな。
(田中)
「いいよね」っていうところで落ち着くんですか。やっぱりそこは「え、私、
あまり嫌い」とか。
(木下)
ああでもそれはもちろんあります。
(田中)
「そこよりこっちの小節のほうが私は好き」みたいな、言い争いはなったりす
るんですか。
(木下)
そうですね。
(田中)
「そう?」みたいな。
(木下)
うんうんうんうんうん。
(田中)
そこの好みはやっぱり個人差が。
(木下)
ありますね。
(田中)
でも逆にそれで、まあ盛り上がるっていうか、「そこがいいんだ」っていう。
(木下)
そうですね。
(田中)
なぜいいかみたいなところまではいかないんですね。
(木下)
ああでも、それもこう何かしらこう考えたりはするんですけれども。
(田中)
「どうしてそこが好きか」みたいな。主張しあったりするんですか。
(木下)
そうですね、まー、そんなにこう哲学科の方ほどなんか、これこれこういう理
由で、あのー、いいんだということにはならなくて、むしろこう、気づきとい
うか、…。
(田中)
たとえば、「ショパンのこの曲の最初の小節が私は好きなんだけど、どう」と
聞かれたら、どう答えるんですか。
(木下)
あー、そうですね。最初のところもいいんですけれども、最初に弾いた部分が、
こう戻ってくる手前の小節がいいと思っていて。
(田中)
「そう?」とか言われれると。言いはるんですか、そこで。そこはなんか、お互
い聞き合うんですか。好みの感じを。
(木下)
そうですね。どっちかが間違っているというよりは、その魅力というのを、こ
うおたがいに、もっともっと言い合っていくという感じで、そのー、曲がどう
いうふうに素敵かっていうことを、まあ、発見していくっていう感じですね。
(田中)
楽しいですね。その、ひとつの曲をめぐって、まあ三人か四人かで、批評しあ
うわけですよね。どこのパート、パートというか小節が好きか、という。そこ
をそういうふうに感じていたのかという新しい発見があったりするわけですよ
ね。
(木下)
そうですね。
(田中)
でも別にそれは新しくなくて、想定内のことというのが多いんですか。
(木下)
うん、あ、でもそうですね。わりとこうなんかまあ、「ここ、いいな」みたい
なのは「あー、たしかにそうだね」っていうのは。
(田中)
「たしかに」っていう形でそこは主張するんですか。
(木下)
なんかこう言われてみて、「ああそうだね、そこはそうだった」ということが。
(田中)
ぜんぜん話にならないっていうところはないんですか。
(木下)
まあないですね。
(田中)
それはちょっと不思議な感じですが、そういう会話のなかにいたことがないの
で。どこがより好きかっていう会話って入ってみたいです
けど、スキルがないので、面白いですね。それに対して、こう、哲学、たとえ
ばウィトゲンシュタインの本の、こう言っていたところが自分は疑問に思って
いるんだけどっていう会話の空間ですね。まあ、慶應に移られて。
(木下)
そうですね。
(田中)
なんか違ってきたんですか。
(木下)
そうですね。哲学科の方たちの会話は、やっぱりこう、うーん、すごくこう論
理を組み立てて話されているというか、さっきのウィトゲンシュタインにして
も、ウィトゲンシュタインはあまりないかもしれないんですけども、まあなん
かの本の議論について、こうここの議論が飛躍しているから、おかしいとか、
そのこういう反例が考えられるんじゃないかとか、こういう想定をしてみたら
どうだろうか、とか。
(田中)
たしかに使っている筋肉違いそうですね(笑)
すごいなんか、好きか嫌いかっていうところから、論理的に矛盾があるんじゃ
ないかとか、こっちの想定のほうがよりある問題について説明できるとか、
そういうお話になってくるんですよね。そのへんは、こう、辛いとかっていう
ことはないですか。ぜんぜん違うタイプの会話の集団に移られて。
(木下)
あそれは、ぜんぜんないですね。やっぱりこう、いままでと違うことですし、
そのあまりこう、自分が言葉で表現していくとか、論理的に話を組み立てると
かっていうことがまだぜんぜんできないっているので、こうもどかしい部分、
もどかしいですし、こう日々こう、不満というか、そういうのはあるんですけ
れども、やっぱりそれができるようになったら、すごくすてきだなって思うの
で、いまのそういう空間に、えっと、いられるっていうことがすごくうれしい
なと思っています。
(田中)
どうしてそのー、言語を使って論理的に何かを組み立てていくっていうことが
すてきだなと思ったんですか。そもそも哲学をやられたきっかけっていうこと
になると思うんですけど。
(木下)
そうですね。あー、うん、哲学を、えっとー、勉強するようになったきっかけっ
ていうのは、言葉の意味っていうことに、ことをすごく気になった時期があっ
て、看板とかになんかはなまるマークとかって、こう看板が書いてあると、な
んこうえーと、この意味はなんなんだろうとか、なんでこういう、なんかイン
クのしみみたいなものが意味を持つって言われるのかとか、ひとが話している
言葉と自分が話している言葉が同じ意味なのかな、みたいなまあ疑問がちょっ
とあって。で、まあえーと、そういうのが哲学で扱われているとか、だれがど
ういうことを言っているみたいなことはぜんぜん知らなかったので、なんかそ
のままぼーっと思ってたんですけれども。
(田中)
単なる個人的な疑問として。それはけっこう小さいときから。
(木下)
そうですね。うん、なんとなく思っていて。
(田中)
疑問は、たとえばその、楽譜はなぜこういうふうにするのかっていうのと同じ
ようなレベルであったんですか。言葉の意味と音の意味というか。
(木下)
そうですね。音の意味とかも、あそれは、音楽の大学に入ってから考えるよう
になりましたけど。
(田中)
では最初の疑問としては言葉のほうがより不思議だったんですね、木下さんに
とっては。
(木下)
そうですね、はい。
(田中)
それは音楽のほうはわりと疑問もなく、鍛錬されて、あるときやっぱり気にな
るってそういう時期がきて、いま移ってしまったっていう。
(木下)
そうですね、はい。
(田中)
最初に、触れた哲学書だったりっていうのはどういうものだったんですか。
(木下)
あー、それはたまたま、えーと、ウィトゲンシュタインの、なんか、『反哲学
的断章』を、なんか図書館で、こう、ぱらっと見た機会があって。
(田中)
すごい偶然というか。
(木下)
偶然ですね。
(田中)
それを手にとってしまったんですね(笑)。
(木下)
はい(笑)。
で、そこで、言葉の意味とか、言葉の理解について、こう、書いてあって、
あのー、なんか、自分が疑問に思っていることに、答えてくれるような気
がして、すごく面白いなと思って、で、そこからウィトゲンシュタインに
ついて書いた解説書だったり、を読んでいるうちに、そういう言葉の問題
を言語哲学っていう分野でやっているんだなということを知って。
(田中)
なるほど。すごい決断だったと思うんですけど。決断でもなかったんですか、
そこは。移る、ピアノの世界から哲学の世界に移るっていうのは。
(木下)
うーん、ま、決断でしたね。
(田中)
周りの方的には、止められたりとかなかったんですか。
(木下)
あー、止められましたね(笑)。
(田中)
やっぱり(笑)。
(木下)
こうなんかやっぱり、いまさら新しいことをやっても、こうそんな身になんな
いんじゃないかとか、いままでせっかくピアノやってきたことをこう止めるの
はよくないんじゃないかとかっていうことも、あのー、友達とか、大人、あ大
人というか先生方からも言われたんですけれども。
(田中)
ご自身ではもう、ふりきって、じゃあ。その、反対意見は。
(木下)
うーん。
(田中)
いちおう反論されたんですか、それに対して。
(木下)
いや、それもたしかにその意見はもちろんそうだと思うし、自分でもそこはこ
う、どうなのかなって分からないので、すごく悩んだんですけれども。
(田中)
まだ半年ですもんね。移られてから。
(木下)
そうですね。
(田中)
まだちょっと引きずっているんですか。
(木下)
いやそれは、入ってよかったなと思います。
(田中)
それはよかったですね。では決断されるときは悩まれたけれども、自分の直感
を信じて。
(木下)
うーん、そうですね。
(田中)
なるほど。いまあのー、哲学のなかでやられているテーマっていうのはやっぱ
り音楽にすこしは関係してくるようなテーマなんですか。
(木下)
あーそうですね。もともとさっき言ったように、言語哲学をやるっていうこと
で、えっとー、入ったんですけれども、音楽の美学っていうのを、あ、音楽の
哲学っていうのがあるっていうのを入ってから知って、で、えーと、その音楽
と言語哲学でこう何かできないかなっていうふうに考えて、でまあやっぱり、
そのもともとその、言語を理解するっていうことがどういうことなのかってい
うことにすごく疑問があったので、えーとそれと同じように、そのー、音楽を
理解するっていうこともどういうことなのかっていうことを、こう一緒に考え
てみようと思って、そのー、音楽のほうもけっこう言語と類比されること多い
ですし、実際その楽譜と実際に出ている音とか、音っていう仕組みが言語の文
字と音声でしゃべることだっていうふうに対比できますし、そのー、言語でい
う文法みたいなのも音楽で、和声の文法みたいなものがあるので、けっこう似
ている部分があるんですけれども、その二つがどのように違うのかっていうこ
とを探ることで、音楽にこう本質的なものは何なのかとか、音楽の特殊的な価
値だったり、まあ目的だったりとか、っていうものも、納得のできる答えが出
ればいいなと思ってます。
(田中)
そこはやっぱり演奏者であったお立場で考えられるのとは、あのー、演奏した
経験のないひとが考えるのと、ぜんぜん違うと思うんですね。経験があるかな
いかで。だから非常に貴重な哲学者が誕生するんじゃないかというふうに予感
がするんですけれども、かつていたんですかね、そういう方って。ピアニスト
で哲学科であったというようなひとって。
(木下)
ピアニストで。うーん。
(田中)
あまりその組み合わせが、木下さんにお会いするまで、分からなかったんです
けど、たぶん哲学をやられていて趣味的に、あのー、ギター弾いてますとか、
趣味はピアノですっていう方はいると思うんですけれども、もともとピアノが
専門で、っていう方ははじめてお会いして、あー、だからぜひお話をおうかが
いしたいなと思ったところだったんですけれども。どなたかお知り合いだった
りとか、先人の例とかってご存知ですか。
(木下)
なんかそうですね、もともと音楽をやっていて移ったっていう方は知らないで
すね。
(田中)
ですよね。
(木下)
でもやっぱり、音楽にすごーく詳しいとか、さっき仰ったように、哲学をやっ
ていてまあ演奏もすごくできるみたいな方はけっこういらっしゃるみたいです。
(田中)
ベースが音楽か哲学かでかなり違う部分が。結論としても、そのー、方法論と
しても違ってくると思うので、すごくいまあのー哲学科のなかでもたぶん期待
されているところだと思うので。あのーテーマとしては、言葉と音楽の違いを、
構造的には、音と、話されているものと、テキストがあって、楽譜と音、一方
で楽譜と音っていうものがあって、構造的には同じだけれども、何が逆に違う
のかっていうことをテーマとされているというお話だったんですけれども、あ
のー、そこの問題に対して言語哲学とあと、美学という分野でもあのー模索さ
れているというお話だったんですが、美学ではどういうところにいま関心があ
りますか。何かいま仰ったテーマに対して、美学のここの部分はけっこう使え
そうな予感がしているっていうものってありますか。
(木下)
あー、そうですね。でも美学の分野でも、そのー、音楽を、記号システムとか
考えて、うーんと。
(田中)
あ、じゃあ、音楽担当が美学って感じなんですかね。言葉担当が言語哲学。
(木下)
あー、そうです。そうです、そうです。
(田中)
なるほど、なるほど。じゃあその二つ、言語哲学と美学の方法論のなかで言わ
れていることを対比させることによって、二つの違いを明らかにしていこうと
いうことなんですかね。
(木下)
そうですね。まあでも、もともと、その、いまやっている音楽の哲学っていう
分野は、言語哲学の、そのー、なかから、その、一派として出てきたような分
野ではあるので、そのなんか、別々のことをやっているっていうわけではなく
て。
(田中)
重なる部分があるんですね、じゃあ。
(木下)
そうですね。
(田中)
あー、それは面白いですね。
(木下)
はい。
(田中)
言語哲学のなかでも音楽について論じられている部分があって、逆に美学のな
かでも言葉について論じられているところがあるわけですよね。あー、じゃあ
そこをちょっとうまくすくいとってつなげていくだけでも。それを木下さんが
やられるっていうことですよね。すごく、何が出てくるんだろうっていう。楽
しみですね。
(木下)
そうですね。うーん、でも、両方とも、その音楽にしても、言語にしても、す
ごく、あまりにも広い、こう、対象なので。
(田中)
何をすくいとろうという選択肢がいっぱいでまいっちゃうっていうところはあ
るんですね。もともとの自分の関心が、どういうところだったのかっていうの
は、あらためて考えるところですかね。いまの一年生の段階では。
(木下)
あー、そうですね、はい。
(田中)
そういうなんか、新しい挑戦を、新しい挑戦の一年目っていうところに立ち会
えて、本当に光栄です。ピアノの演奏までお聞かせいただいて、はい。あのー、
そしたら、まあ違いを、言葉と音楽の違いを明らかにしていくことで、まあ、
木下さんにしか発見できない何かがいまから明らかになっていくと思うんです
けれども、それをこう、将来的にはどういう形で、自分のこう、なんていうん
でしょう、目標としてはどういうところへつなげていきたいと考えられてます
か。
(木下)
あー、…。そうですねー。将来的に。えーと。
(田中)
そこはあまり、いま、こう、やっていることで、けっこういっぱいいっぱいな
感じですか。
(木下)
うーん、そうですね。あの、うん。
(田中)
楽しくてしょうがない感じですね。なるほど。
(木下)
あの、うん、とにかくこう、うん、何かになりたいとかっていう希望ではなく
て、その、いままずその、論文とか本を読む力をつけて、その、いまよりも、
こう、早く、こう一度にいろんな見解を、こう、読めるようになったら、すご
く、こうなんでしょう、世界が楽しくなるんだろうなっていうのがあって。
(田中)
そんな予感があるんですね。だれにあこがれちゃったんですか(笑)。
(木下)
いや、そういうことではなくて。
(田中)
ああ、そういう自分になりたいっていう。
(木下)
そうですね。
(田中)
あー、なるほど。
(木下)
で、その、もっと自分でも、そういう論証を組み立てられるようになったら、
すごく、…、こう、なんか日常、日常というか、うん、楽しいんだろうなって
思うので、早く力をつけたいです。
(田中)
じゃあそんなふうに、こう、たとえばいまからですね、10代の方が、ピアノを
されている方が、「自分、もしかして哲学なんじゃないかな」って目覚めてし
まったひとがいるとしたら、どんな声をかけてあげますか。
(木下)
えっと、ピアノをやっている10代の方ですか。うーん。
(田中)
「楽しいよ」って(笑)。
(木下)
そうですね(笑)。
(田中)
「これはこれで楽しいよ」って。
(木下)
はい。
(田中)
なんかすごく充実した様子が伝わってきて、いまっていう時間を楽しんでもら
えるっていうことが伝わってきて。
(木下)
そうですね。
(田中)
それが一番ですよね(笑)。
(木下)
あのー、いまその、美学の、えーと、関係で、えっとー、東京大学の、あの、
美学研究室で、えっと、現代美学、現代の美学のえっとー、古典的な論文を読
んでいこうっていう勉強会をやっていて、それに参加させていただいているん
ですけれども。
(田中)
慶應にいつもはいらっしゃるんだけれども、東京大学で。そういう研究会があ
る。
(木下)
ああ、はい。研究会があって、現代の美学の、美学を研究する方っていうのが、
あのー、まだまだ少ないということで、あのー、参加してくれる方を。
(田中)
大歓迎な。
(木下)
大歓迎しているので、あのー、ぜひ興味のある方は来ていただきたいなと思い
ます。
(田中)
木下さんご自身も、「来てくれた」っていう感じだったんじゃないですか。他
大学からだけれども。
(木下)
いや、なんか。
(田中)
どうでした、最初にそこの研究会に行かれた雰囲気っていうのは。
(木下)
あーそうですね。あまりすごく、こう、みなさん、親切にしてくださって、あ
の、いろいろ教えていただけますし、勉強になってます。
(田中)
何人くらいでいつもされているんですか。
(木下)
えっとー、そうですね。だいたい、4~5人ですかね。
(田中)
そういう少人数で。
(木下)
そうですね。いちおう、メンバーとしてはもうちょっといるんですけれども、
その毎回こう、来られる方は4~5人ですかね。
(田中)
分かりました。今日は木下さんの演奏と、あと自分の、ご自身の問題関心につ
いてですね、くわしくお話いただいて、本当にありがとうございました。
(木下)
ありがとうございました。
(田中)
今日は、あのー、ピアノをされている方もですね、哲学をされている方も、両
方の方にとって、ここに期待の新人が現れたっていうのがお届けできる内容に
なったんじゃないかなと思いますので、はい、今日はどうもありがとうござい
ました。
(木下)
ありがとうございました。

5歳からピアノを始める。桐朋学園大学ピアノ科卒。現在、慶應義塾大学文学研究科修士課程在籍中。

