哲楽メールマガジン3月号(3月31日発行)

2016年3月31日

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田中さをり
哲楽編集人・田中さをり 千葉大学大学院にて哲学と情報科学を専攻し、それぞれ修士号、博士号を取得。現在、高校生からの哲学雑誌『哲楽』をはじめ、様々な媒体で科学技術や哲学に関する執筆編集活動を続けている。




 哲楽メールマガジン

2016/3/31日号 vol.20

いつも高校生からの哲学雑誌『哲楽』を応援頂きありがとうございます。哲楽メールマガジンをお届けします。最後までゆっくりお付き合い下さい!

News

永井均さんウェブサイト開設

Review
書評・現代哲学ラボ 第1号

News

哲学関連ニュース

 

News

永井均さんウェブサイト開設

哲楽第6号で特集させて頂いた永井均さんのウェブサイトができました。出版物一覧と哲楽インタビューを含めた日英バイリンガルです。

実は、膨大なご著書をまとめた出版物一覧がこれまで公開されておらず、哲楽インタimg-nagai-6ビュー中に、「永井さんがどこかで言ってたと思うけど…」と色々な方から言われるたびに冷や汗かいてました。ご本人からも一部の文献リストのご提供を頂き、ウェブサイトとして形になりました。これで少し安心です。出版物のページから、公開されている論文にもアクセスできますので、どうぞお楽しみください!

 

Review

書評・現代哲学ラボ 第1号

親鸞仏教センターの研究員・中村玲太さんによる「現代哲学ラボ 第1号―入不二基義のあるようにありなるようになるとは?」の書評が出されました。同書はKindle版で4525キロバイトですが、書評の対象になったことで、重さを頂いた気がします。中村さん、ありがとうございました!

News

哲学関連ニュース

今月の編集人Tweeter (@MIDAP) で通り過ぎていった哲学関連ニュースをまとめてお届け!2016年2月29日〜3月31日分

哲学

[ニュース 3/7]毎日新聞:「哲学カフェ」人気 他人との対等な対話、仙台から広まる mainichi.jp/articles/20160

[ニュース 3/10]Quartz:Teaching kids philosophy makes them smarter in math and English qz.com/635002/teachin

[ニュース 3/17]dot.:《ベストセラー解読 (週刊朝日)》 哲学な日々 野矢茂樹著 dot.asahi.com/ent/publicatio

[ニュース 3/13]ハフィントンポスト:多和田葉子の哲学と「人間といのち」 www.huffingtonpost.jp/kazuo-yamaguch

[ニュース 3/27]朝日新聞:3・11後、私は変わったか 詩人と哲学者に聞く www.asahi.com/articles/ASJ3T

[ニュース 3/27]Quartz:What happened when the World Bank asked a philosophy professor to consider its policies qz.com/648363/what-ha

[ニュース 3/26]ITEET:What is the Difference Between Philosophy, Science, and Religion? ieet.org/index.php/IEET

[ニュース 3/19]Review: Sarah Bakewell examines the intersection of life and philosophy in At the Existentialist Café www.theglobeandmail.com/arts/books-and

[ニュース 3/27]東洋経済オンライン:哲学に「人生の救い」を求めるのは、筋違いだ(中島義道) toyokeizai.net/articles/-/110

教育

[ニュース 2/29]毎日新聞:倫理、政経を選択科目に 次期高校指導要領で改定案 mainichi.jp/articles/20160

[ニュース 3/4] 朝日新聞:子どもの内面、どう評価? 道徳教科化、戸惑う現場 www.asahi.com/articles/DA3S1

ロボット・人工知能

[ニュース 3/2]ITpro:「緊急時、人間はロボットを信じすぎる」 実験で驚きの結果 itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/idg/14/48

[ニュース 3/8]IRORIO:新大学入試、記述式問題を「人工知能」が採点?文科省が検討 irorio.jp/nagasawamaki/2

[ニュース 3/17]GIGAZINE:Googleが人工知能AlphaGoと世界最強棋士の対局から学んだ2つのこと gigazine.net/news/20160317-

[ニュース 3/8]CNET Japan:ロボットは「味方」か「脅威」か–Pepper、RoBoHoN、ルンバの担当者が議論 japan.cnet.com/sp/target2020/

[ニュース 3/28]産経:トラクターなど農機無人運転を「ロボ五輪」の競技種目に 政府、技術向上狙い競技化検討 www.sankei.com/economy/news/1

[ニュース 3/1]techcrunch:Googleの自動走行車、AI運転中に接触事故を起こす jp.techcrunch.com/2016/03/01/201

[ニュース 3/14]livedoor:運転手がいない? 「自動運転タクシー」の実証がスタート news.livedoor.com/article/detail

[ニュース 3/21]Tech Times:AlphaGo Beats Go Human Champ: Godfather Of Deep Learning Tells Us Do Not Be Afraid Of AI www.techtimes.com/articles/14272

[ニュース 3/22]Forbs: A Short History Of Deep Learning — Everyone Should Read www.forbes.com/sites/bernardm

[ニュース 3/23]日経デジタルヘルス:「人間の評価には限界」、精神科疾患に機械学習で挑む techon.nikkeibp.co.jp/atcl/event/15/

[ニュース 3/25] Engadget:マイクロソフトの機械学習AI「Tay」、ネットで差別と陰謀論に染まって一日で公開停止 japanese.engadget.com/2016/03/24/ai-

障害・手話

[ニュース 3/20]毎日新聞:中村桂子・評 『手話を生きる−少数言語が多数派日本語と出会うところで』=斉藤道雄・著 mainichi.jp/articles/20160

[ニュース 3/21]読売新聞:[顔] 親子3代の学習障害を本にした松本さん www.yomiuri.co.jp/komachi/news/2

[ニュース 3/21]東洋経済:「ダウン症」で生まれた子どもは不幸ですか? toyokeizai.net/articles/-/109

[ニュース 3/31]山陽新聞:発達障害の支援 法改正で成人期を手厚くwww.sanyonews.jp/article/323558

医療・生命科学

[ニュース 3/1]日経:ヒトと動物が共存する未来を目指すには www.nikkei.com/article/DGXMZO

[ニュース 3/8]毎日新聞:新型出生前診断、命の選別考える 講演とディスカッション 小倉南で20日 /福岡 mainichi.jp/articles/20160

[ニュース 3/8]Qlifepro:産後うつ対策が、ガイドラインへ www.qlifepro.com/ishin/2016/03/

[ニュース 3/12] 毎日新聞:順天堂大浦安病院:公費助成で卵子凍結へ 倫理委、初承認  mainichi.jp/articles/20160

動物

[ニュース 2/26]sippo:猫の調査費、避妊手術費を予算に 鹿児島県奄美市 sippolife.jp/article/201602

社会

[ニュース 3/7]ハフィントンポスト:「あのとき、おなかに子供がいました」福島第一原発の女性オペレーターは、5年後も現場にいた。 www.huffingtonpost.jp/2016/03/05/fuk

[ニュース 3/18]J-CAST:自炊代行「著作権侵害」と認定 最高裁が業者の上告退ける www.j-cast.com/2016/03/182617

[ニュース 3/24]JCAST:ひきこもりの部屋ドアを破壊、突入 「更生術」TV番組に精神科医からも抗議の声 www.j-cast.com/2016/03/242623

[ニュース 3/26]Yahoo:「貧困ピアサポーター」ひきこもり(田中俊英) bylines.news.yahoo.co.jp/tanakatoshihid

国際

[ニュース 3/8]IRORIO:再婚禁止「100日」で閣議決定するも、国連は更なる改善を要求 irorio.jp/nagasawamaki/2

[ニュース 3/18]産経:独国防相の博士号取り消さず 論文盗用疑惑で出身の医科大「意図的な不正ではない」 www.sankei.com/world/news/160

[ニュース 3/9]ハフィントンポスト:男系男子の皇位継承を「女性差別」と批判 皇室典範の見直し、国連委が当初要求 www.huffingtonpost.jp/2016/03/08/imp

[ニュース 3/16]livedoor:フランスで91歳女性が博士号取得 30年かけて博士論文を執筆 news.livedoor.com/article/detail

[ニュース 3/26]日本経済新聞:「男女が同じ選択肢を」 夫婦同姓、国連は改善勧告 最高裁が「合憲」判決 style.nikkei.com/article/DGXMZO

Afterwords

編集後記

Twitter用の日々のニュースをチェックするなかで、ここ数年で人工知能やロボットのニュースが増えすぎて追えなくなってきました。アルファ碁の登場以降、また一気に増えたのですが、量の増加以上に、その内容について、混乱が生じているように思えるものがしばしばあります。このメルマガで紹介する記事は比較的少ないものを選んでいますが、どんな種類の混乱が多いのかを整理すると、次の3つになるかと思います。

(1)「人工知能の専門家」や「人工知能学者」として取材を受けている研究者が、工学という幅広い学問分野における何の専門家なのかが分りにくいこと。
(2) 学習・認識・合成・獲得・生成・人工無能などが、すべて専門用語であることが明記されていないこと。
(3) 専門性が遠い人が書いているか、逆に近すぎるステークホルダーが書いているため、内容が事実と異なっていたり、広告記事と区別がつかなかったりすること。

人工知能におけるサイエンス・コミュニケーション(広報や報道の書き方)には、上記の3つの混乱を引き起こしてしまう、独自の難しさがあるようです。各国の経済戦略で人工知能分野に注目が集まり、Googleなどの多国籍大企業が開発をリードし、第3次人工知能ブームに期待する国内の研究者が増えている一方で、ジェネラルな人工知能の専門家が不在のため、研究者から発信される情報が特定の専門に偏ったものにならざるを得ないことも関係していそうです。

哲楽のTwitter(@midap)では、ときどき、哲学者とAI開発者の架空の会話をツイートしています。あの哲学者なら人工知能の問題にどういう疑問をもつのかな、あの研究者や開発者ならどう答えるかな、といろいろな人の顔と声を想像しながら二人の会話を書いています。勉強しつつこのような形で少しずつですが、ご興味がある方はTwitterで御覧下さい。人工知能に関する素朴な疑問などお寄せ頂けたら、追々二人の会話の中で考えてみたいと思います。もしかしたら、新しい種類の混乱を引き起こしてしまうかもしれませんが!

機械学習の学習は何を指すのか(1)
A:  機械学習の「学習」が現実空間にグラウンディングしてないことが問題だと思うんだが。
B: 機械学習でいうところの学習がどんなアルゴリズムを指しているかは、おわかりですか。
A: すべてはわからん。
B: アルゴリズムによって学習が指す内容も違ってきます。
A: 一般的な学習の意味について説明してくれんかね
B: 入力データの認識結果を正解に近づけるために行われる変数の調整です。
A: それならLearningよりもFittingの方がいいんじゃないのかと思うが。
B: それはそうですが、最初に考えた人がLearningと言っちゃったんです。
A: ではAIでいう「認識」は何を指すのかね。
B: システムが最終的に出力する結果です。内部で出力される結果もそうです。それをまた入力して学習させる場合は循環します。
A: 循環している場合はどこが認識になるんだね。
B: ニューラルネットワークなら下の方です。
A: はは!下の方とかディープとか空間的に判断して呼んでるのは、やはり開発者の方なんだな。
B: ええ、図で説明しないと伝わりませんし。それが何か問題ですか?
A: 人工知能のディープラーニングって言い方がいろいろ誤解を招くんだよ。まずカント読みたまえ。
B: いやまずアルゴリズムを勉強してください。

機械学習の学習は何を指すのか(2)
A: 基礎的な機械学習のアルゴリズムをざっと読んでみたんだが。
B: 学習の意味についてイメージできましたか?
A: 人工知能の学習はある種の構造をなした数理モデルでしかないということだな。
B: ええ、人間の脳機能を模したものとして研究が始まりましたから。
A:しかし、深層学習のもとの構造については、英語では人工ニューラルネットワークと呼ばれているじゃないか。
B:ええ、そうですが。
A:つまり人間の脳機能とは別物ということだよ。
B:脳機能には未解明な部分が多いので、人工知能とも一部重なっている可能性はあるかと。
A: 問題は2つある。
B: 2つもありますか。
A: 一つ目は人間の知能が脳機能だけを指すとは一般人は思っていないことだよ。
B: それはそうかもしれませんが、身体知や感性のレベルでも同じ発想は使えます。
A: そっちはまだ不勉強だな。
B: もう一つの問題は何ですか?
A: 人間の脳機能と同じものを作りたいという願望で人工知能の開発が始まり、一旦は人間の脳機能とは区別されて様々なモデルができたものの、一部は重なっている可能性があると開発者が思っている。
A: これは問題でしょうか。
B: 問題だよ。君の思う可能性は願望でしかないんだよ。それなら人工知能は神や天使になれる可能性だってあるだろうよ。
A: それは極論です。
B: 私から見れば、人工知能のディープラーニングというネーミングセンスも極端だと思うがね。

田中さをり

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