防災哲学カフェその1

2013年12月19日

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編集人・田中さをり
千葉大学にて哲学、 倫理学、情報科学を学ぶ。アメリカのコネチカット大学で訪問研究員として二年間過ごした後、日本の複数の大学や企業でテクニカル・スタッフとして勤務する。 日米でのアカデミックな経験を通して、学術分野での広報と質の高い文章作成の重要性を実感する。現在、コピーライティング、web 制作、雑誌編集、ポドキャスティング、翻訳マネジメントなどに従事しながら、学術広報活動を続けている。

哲楽第5号の発売を記念して、12月7日、西千葉のムーンライトブックストアさんにて「防災哲学カフェ」を開催しました。ゲストとして、全国30カ所以上でサイエンスカフェを開催されて来られた、サイエンスコミュニケーションの専門家、立花浩司さんをお招きし、ご近隣にお住まいの方を中心に9名の参加者が集いました。

「防災哲学カフェ」は、防災地図作りと哲学カフェを融合したイベントで、哲楽編集部のオリジナルです。最初の防災地図作りでは、現代の地図に透明シートを重ねて、土砂災害・水害・コンビナート火災のリスクが高い地域と、避難所、海岸線に印をつけた後、大正期の地図にシートを映し、昔の地形を確認します。この手法の考案者は、総務省消防庁の防災図上訓練指導員、鈴木光さん。横浜市で実施された様子を新聞で拝見し、編集部近隣での哲学カフェを組み合わせた企画に結びつきました。

防災哲学カフェ当日、ゲストの立花浩司さんより千葉県内で過去に起こった地震による液状化や火災の被害事例が報告された後、参加者全員で透明シートを敷いた現代の千葉市周辺の地図を囲みました。

千葉市は東京湾に面して埋め立て地が広がっている地形で、地震後の液状化リスクの高い地域が市の大部分を占めています。参加者の世代は20代から80代と幅広く、私達は手分けして、総武線と京葉線の線路と各駅にシールを貼り、海岸線を線で囲み、河川にも色を塗りました。さらに千葉市が公開している防災地図や参加者の記憶から確認しながら、避難所、土砂災害の危険地域、過去に液状化が起こった地域、石油コンビナートの位置も色付けしました。

そしていよいよこのイベントのハイライト、透明シートの下の地図を大正10年の地図に差し替えることになりました。参加者全員が静かに見守る中、地図が古いものに差し替えられると、一斉に大歓声があがりました。千葉市が指定している土砂災害の危険地域は昔の海岸線で、液状化が実際に起こった地域は水田、さらに地震後の液状化リスクが高いと言われている地域はほとんど海だったのです。これには一同「これは納得できるね〜」の声。これまで災害が起こった場所やそのリスクの高い地域と昔の地形を対応づけられたことで、「なぜ特定の地域が危険なのか」の答えを共有することができたからです。

大正時代の地図上で、現代の海岸線や地形を確認する

大正時代の地図上で、現代の海岸線や地形を確認する

 

唯一、疑問として残されたのが、1990年に開通した京葉線の3駅が、「なぜ100年前の河口のちょうど真上に立てられたのか」ということ。3駅がちょうど3つの河川の河口位置にぴたりと一致するので、建設時の何らかの意図があるように思えたものの、なぜあえてリスクが高そうな場所に建設されたのかは全員わからず、各自の宿題になったのでした。

 

(後半につづく…)

 

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