育児と哲学と :「信仰と哲学を切り分ける」

2011年7月31日

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村上 綾 (むらかみ・あや)
1977年生まれ。広島大学文学部卒業後、千葉大学大学院博士後期課程に進学し、その後、単位取得退学。一貫して「私の哲学」に関心をもつ。現在は、育児のかたわら、自宅で研究を続けている。

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(2011年5月22日収録)
「私」の哲学をテーマに博士課程を単位取得退学され、二人のお子さんの育児の傍ら、ご自宅で研究を続けておられる村上綾さんにお話を伺いました。信仰と哲学を切り分けながら、夜の一時間を使って「私」の存在について考え続けてこられたお話です。

質問事項

  1. 大学と大学院での専門について(0:21)
  2. 「私」や「神」の問題に関心をもった時期について(03:30)
  3. 小学生のときに見えた問題について(05:28)
  4. 大学院までの研究で問題解決がどこまでできたか(06:55)
  5. 出産の経験と問題意識の関連について(08:55)
  6. 信仰と問題意識の関連について(10:59)
  7. 哲学と日常生活の関係について(13:18)
  8. 主婦としての生活と哲学を両立するには(16:40)
  9. 同じ問題意識をもつ人との対話について(20:02)
  10. 日常生活の中で表現する手段について(21:42)
  11. 哲学主婦ネットワークの可能性について(23:05)
  12. アメリカ滞在中に哲学の時間を確保するには(26:11)
  13. 神の問題について(27:32)

インタビュー抜粋

田中
改めまして田中です。今日は村上綾さんという、私のお友達でもあるんですが、綾さん
のお話を伺いに教会まで押し掛けています。村上綾さんは、千葉大学大学院で、永井均
先生のもとで哲学を学ばれていました。当時同期の学生として親しくさせて頂いていた
んですが、その問題意識についてあまり伺ったことがなかったので、色々教えて頂こう
と押し掛けました。まず、大学の時に何を勉強されていて、大学院の時にどういう研究
をされていたのか、簡単に教えて頂けますか?

村上
大学の時はまだ永井先生のところには来ていなくて、すごくオーソドックスな西洋哲学
というか、広島の方にいたんですけど、もともとは問題意識としては、「私」の問題に
ついて関心があったので、哲学科というところを選んで入ったんですけど、実際入って
みると、私の選んだ大学では、語学が必修科目としてあって、大学での中心的な学びと
いうのは、ドイツの方の、ハイデッガーとか、そういう専門の先生がいらして。私が直
接関わった先生はトマスを専門にされている先生で。そこではすごくオーソドックスな
研究生活というか、文献を読んで、そこから問題を探って行くというようなことが中心
だったんですね。大学に在学しているときに、初めて永井先生の本を読んで、永井先生
を通してヴィトゲンシュタインを知ったというかそういうところもあって、それで大学
院の時に千葉の方に移って。大学院では、私の問題について。大学の卒論もやはり独我
論ということで、卒論は書いたんですけど。ヴィトゲンシュタインを中心に書いていた
んですけど、自分の思っている所とは違う所に着地してしまったというか、そういう感
覚がずっとあって、大学院に入ってそれがどうしてなのかというところに興味があって。
大学院に入ってから大体の理由はわかったんですけど。一貫して、私の問題とか神の問
題とかそういうところにずっとあります。

田中
その問いに興味をもった年齢とは、小学校とか中学校とか「私」がどういうふうに存在
しているかとか、神がどういうふうに存在しているかとか興味を持ったのは何才くらい
だったんでしょう。

村上
すごく印象的に覚えているのは、小学校の帰り道のときに、何かの習い事の帰りだった
と思うんですけど、一人で歩いていて。これだと思ったんですね。小学校の高学年だと
思うんですけど、これは私にとってすごく問題なんだと思った時があって。中学校では
もちろん念頭にはあったんですけど、それをどう深めていいかはもちろんわからなくて。
高校に入って、倫理の授業が選択でとれたんですけど、先生が哲学科出身の先生だった
んですね。女性の先生だったんですけど。その先生と少しお話する機会があって。ただ
その先生が「あなたがもっている問題意識はもちろんそれとして大事だけれどそれで哲
学科に進むということは、どうかな」とおっしゃったことがあって。「哲学を学ぶとい
うことは文献を学ぶということがメインだから、語学に追われてあなたの思っているこ
とはできないと思う」と率直におっしゃったんですね。でも何となく直観的に、他の分
野では自分の持っている問題意識を解決できないと思ったので、語学は語学でそれをし
なければならないとしたらそれをするとして、そちらに進むと決めたわけです。

田中
具体的に言うとどういう問題意識だったんですか。小学校の時に見えた問題というのは。

 

インタビューをまとめた記事は哲楽第2号でお読み頂けます。

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