意識障害を専門とする若き倫理学者、戸田聡一郎さんの思い

2012年1月30日

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戸田 総一郎(とだ・そういちろう)
2009年山梨大学大学院医学工学総合教育部博士課程修了。博士(医科学)。 現在、東京大学大学院医学系研究科医療倫理学講座特任研究員(文部科学省委託事業「脳科学研究戦略推進プログラム」)

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「戸田聡一郎さんは、東北大学の学生だった頃は、脳科学の研究室で猿やラットや人を使った実験をしていた。人の時間感覚を fMRI で調べたい、そんな思いで脳科学の研究を続けていた。しかしきれいなデー タが取れず、挫折していたころに、「生命倫理学」の授業で倫理学に出会い、夢中で議論に参加した。その後、「脳神経倫理学」の分野を知り、専門的に研究するため、博士課程から山梨大学大学院医学工学総合教育部に移っ た。学部生の頃に、祖母の昏睡状態を目の当たりにしたことも、進路の決断に与えた影響は大きかったという。 博士課程 3 年目で書いた「意識障害における有効なリハビリテーション方法の構築」が日本生命倫理学会で若手論文賞を受賞。戸田さんは現在、脳画像が読める生命倫理学者として、東京大学で研究員として活躍している。」哲楽3号pp.21-27より。

インタビュー抜粋

田中
はい、改めまして田中です。本日は東京大学大学院医学系研究科医療倫理学分野特任研
究員の戸田聡一郎先生の研究室にお邪魔しております。戸田先生今日はよろしくお願い
します。

戸田
よろしくお願いします。

田中
戸田先生のご経歴が大変ユニークでして、まず東北大学大学院の生命科学研究科の修士
課程を修了されまして、その後に、山梨大学大学院医学工学総合教育部博士過程という
ところを修了されました。お持ちになっている学位が、博士(医科学)というものでし
て、その後にこちらの東京大学のほうに移られて、医療倫理学の研究を続けておられま
す。
東北大学にいらっしゃったときから、fMRIという脳の活動状態を見る、(脳)画像をス
ライスして見るような機械を使って、人の脳の状態を調べる研究と、哲学・倫理学の議
論をするという研究を続けて来られたのそうなんですけれども、生命倫理学に関心をお
持ちになったきっかけはどういうところにあったんでしょうか。

戸田
まずは修士の一年のときに、生命倫理の必修の授業がありまして、土屋貴志先生がいらっ
しゃったんです。普段の授業では僕はあまり発言はしないんですけど、倫理でディスカッ
ションした時にかなり白熱した議論になって、僕も結構発言をして。これは面白いなと
思ったのが、本当の生命倫理との出会いの最初でした。学部の時から、意識とか、脳と
か、生態学に興味があったんですけど、脳科学をやっている研究室に所属しまして、意
識に関連のありそうな、人の時間感覚の研究をやりたいなと思っておりまして、そこで
実験を組んでやり始めたんですけど、結局きれいなMRIのデータはでなくて、挫折してい
たときに、哲学とか倫理学に興味があって、先生に相談したところ、今「脳神経倫理学」
というのがあって、たぶん向いているだろうから(笑)ということで、そっちの研究を
やったらどうかと。それが最初に研究を始めたときですかね。知識はあまりなかったん
ですが、すごく面白くて、実験をやっている頃よりはかなり時間を割いて論文を書きま
したし、すごく先生方にも好評だったので、それはすごく良い経験になりました。修士
ではすごく収穫というか、経験をさせて頂いたと思っています。

田中
当時はすでに時間感覚の研究ではなくて、脳神経倫理の研究に移られていたということ
ですか?

戸田
そうですね。

田中
ディスカッションの仕方というのは、学生さん同士で、あるいは先生も交えて、データ
も交えて解釈について議論したという感じだったんですか?

戸田
そうですね。当時、ブレイン・マシン・インターフェースという、足も手も動かない麻
痺している患者さんが、念じるだけでコンピュータ上のカーソルを動かす研究が盛んに
なりつつあって、その倫理的名問題というのを分析したんですけど。例えば今はあまり
議論されないんですが、ブレイン・マシーン・インターフェースが実現化して、その人
が殺人を犯してしまった場合にその責任はどこにあるのかという議論の一部を、哲学的
な意見を交えながら分析したというのが修士論文の一部ですね。

田中
そういうテーマはいかにも哲学者は好きそうなテーマではありますけど(笑)。疑問に
思ったのは、MRIの画像の解釈ができる先生がその場にいらっしゃったんですか?

 

インタビューをまとめた記事は哲楽第3号でお読み頂けます。
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