音楽で哲学の芽を育てよう

2015年5月21日

写真
哲楽編集人・田中さをり

昨年11月の哲楽ライブでピアノの弾き語りをお届けした紀々。この春、子どもと過ごすすべての人に向けたアルバム「願いうた」がリリースされた。

img-CDweb-4

これまで哲楽編集人として、数多くの哲学者にインタビューさせて頂く機会に恵まれ、ひとつ気がついたことがあった。自分の問いに人生をかけて向き合い続けることが出来る人は、子ども時代に耳を傾けてくれる大人が側にいた人であると。つまり、子どもの「哲学の芽」を育てられるかどうかは、大人にかかっているのだと。

小誌『哲楽』を続けて出版するだけでも毎回青息吐息の編集部だが、色々な現実的な心配をよそに、今回、「哲学の芽」を育てる人々を応援するためのレーベルPhilomusicaを設立した。プロの音楽家である紀々の手で、新しい楽曲やアレンジが生まれた。哲学者の永井均氏からも「小さいときバンザイ!」の歌詞の提供を受け、聴くたびに新しい発見のある楽曲が集まった。

収録の場所は、東京都目黒区にあるSound Artsというピアノスタジオ。ほとんどすべての楽曲で、ピアノと歌を同時に収録したことで、やり直しがきかず、限られた時間で一曲あたりのテイクも最小限で収録が進んで行った。その結果、紀々のライブの臨場感と変わらない空気をそのままCDに納めることができた。

紀々の音楽は、深呼吸のための音楽と言われることがある。リハーサル中のスタジオでメールの返信をしようとして、諦めた。相手のメールに答える言葉が続かなかったのだ。

大きく息を吸い、「ありがとうございます」とだけ書いて、画面を閉じた。そして、細く長い息を吐きながら、紀々が弾くスタインウェイの音色を聴いた。

来年、全国の保育園や幼稚園で卒園を迎える子ども達が、このアルバムに収録されている曲を歌ってくれたら。未来の子どもへの、はなむけの歌が、この日できたのではないかと思う。

アルバムの歌詞カードには、哲楽でもおなじみのイラストレーター・立原圭子さんに、絵本風のイラスを描いて頂いた。子ども達と額を寄せ合いながら、歌って欲しい。

▼Amazonで買う

■ 合わせてお読み下さい

なぜ子ども時代の問いを持ち続けられたのか:哲学者永井均氏に聴く
実は私哲学徒でした:沖縄の哲楽家紀々さんに聴く
風間コレヒコによるフィードバック・ノイズで哲楽ライブの幕が閉じる