笑いの坐禅体験

2015年5月21日

 

2014年6月23日、梅雨の晴れ間の月曜日、神奈川県葉山町にある茅山荘で坐禅会が開かれ、永井均さんと一緒に伺った。 総武線快速で千葉方面から東京湾沿いにぐるりと西へ抜け、逗子駅に降り立つと、光が眩しく、人々の表情も明るい。「こりゃぁ空気の品がいいね」と永井さん。駅からタクシーで15分ほど住宅街を抜け、山道を上ると、茅葺き屋根の立派な門が見えてきた。門をくぐると、そこは竹林が広がる異次元空間。小川を渡り、鶯のさえずりを耳に小道を行くと、坐禅堂には既に30人近い参加者が集まっていた。(哲楽第6号より)

          

最新号「永井哲学の道のりと広がり」のKindle版がKindleストアより発売開始されました。

          

高校生からの哲学雑誌『哲楽』は、手作り製本で創刊され、事務所が併設するSoy Book Cafeで販売されてきました。Cafeで使っていたコーヒーが好評だったことから、『哲楽』の読書のお供に飲んで頂けるような、オリジナルの珈琲豆が誕生しました。

          

永井均さんは日本大学で哲学を教えている。哲学好きな読者ならば知らない人はいない、現代の日本の哲学を牽引してきた哲学者の一人だ。34歳で『〈私〉のメタフィジックス』を上梓してから、平均して年に一冊の著作を発表し続けている。難解でとっつきにくいというのが哲学の一般的なイメージである日本国内で、このペースで新刊本が次々に書店に並べられる、作家としての哲学者は数少ない。過去には、朝日新聞や日本経済新聞でもその随筆が連載され、大学で高校生と保護者向けの説明会を開けば、愛読者も詰めかける。それが哲学者、永井均さんだ。桜の新緑が眩しい4月のある日、編集部に永井さん自ら自転車で駆けつけて下さってインタビューが実現した。

          

木村敏さんは、長年にわたり、精神的な病の診断にまつわる哲学的論考の執筆活動を精力的に続けて来られた。ご専門の精神病理学の分野ではもちろんのこと、2003年に『木村敏著作集第7巻』で和辻哲郎文化賞を受賞されたことからわかるように、哲学の分野でも高名な精神科医だ。国語の教科書にも掲載されているので、その美しい文体は、高校生にも馴染みがあるかもしれない。2014年夏、日本三大祭りの祇園祭の中日、京都市三条通りにある研究室を尋ねた。