哲楽メールマガジン2月号(3月1日発行)

2016年2月29日

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哲楽編集人・田中さをり
高校生からの哲学雑誌『哲楽』編集人。現在、都内の大学で広報職員を務めながら、哲学者へのインタビューを続けている。




 哲楽メールマガジン

2015/3/1日号 vol.19

 

いつも高校生からの哲学雑誌『哲楽』を応援頂きありがとうございます。哲楽メールマガジンをお届けします。最後までゆっくりお付き合い下さい!

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現代哲学ラボ 第2号

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「手話から見た哲学」構想

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現代哲学ラボ 第2号

現代哲学の領域で哲学的な思索を発信している人たちが集い、次世代に哲学を伝える場を作り出す活動の記録を電子書籍版「現代哲学ラボ」としてお届けします。

2015年12月12日にホテル&レジデンス六本木で開催された「永井均氏に聴く:哲学の賑やかさと密やかさ」では、永井均氏をゲストにお迎えし、森岡正博氏が聞き手となりインタビューとディスカッションを行いました。「現代哲学ラボ」第2号は、この時に収録した音源をテキストとして再現し、図表と脚注により、詳細な解説を加えました。

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現代哲学ラボ第2号――永井均の哲学の賑やかさと密やかさ

哲楽編集部 編
語り:永井均・森岡正博
定価:360円

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はじめに

  • 哲学の賑やかさと密やかさ
  • 永井均氏との出会い
  • 普遍化できないはずの〈私〉の問題
  • 驚きから始まる子どもの哲学
  • 他人によって主張された独我論
  • 独我論と独今論の違い
  • 「対話とは何か」を問いなおす
  • 独在性と口
  • 「翔太が〈私〉である」は理解可能か
  • Q&A
    • 〈私〉や〈今〉を生じさせるもの
    • 〈私〉と口のつながり
    • ロジックをロジックで考える
    • 〈私〉は時間で変わらないのか
    • 〈私〉の日本語以外での表現

 

 

 

News

哲学関連ニュース

今月の編集人Tweeter (@MIDAP) で通り過ぎていった哲学関連ニュースをまとめてお届け!2016年2月2日〜2月28日分

哲学

  • @midap 哲学書房さんが2016年1月に廃業されたそうです。数々の哲学書をお出しになってこられた出版社がなくなってしまう悲しみは、もうこれらの本を書店で手に取ることができない悲しみに通じます。図書館や古書店で見かけたら、大事にしたいです。getsuyosha.jp/tetsugakushobobook/03_tetsugaku.html…
  • @midap 哲学を教えている人よりも、哲学科を卒業した人や、カルチャースクールで哲学を学んだ人の方が数が多いはず。そうした人々が哲学書の愛読者であり続けている可能性は高く、次は書き手に(あるいは語り手)なってもらいたい。例えば林業や農業や漁業に従事しながら哲学書を読んる人は素敵です。
  • @midap 哲楽特集「身体性の未来」で取り上げた、山内志朗(@yamauchishiro )さんのインタビュー「芙蓉の花と存在の一義性」の音源を公開しました。お人柄、滲み出ております。 本誌と合わせてお楽しみ頂けますように。http://philosophy-zoo.com/archives/5180
  • [ニュース 2/15]毎日新聞:4月に発足…研究倫理の底上げ図る mainichi.jp/articles/2016016/k00/00m/040/102000c…
  • [ニュース 2/21]Jタウンネット:哲学カフェに参加して、「大学で何を学ぶべき」か話し合ってきた j-town.net/tokyo/column/gtochicolumn/221695.html?p=all…
  • [ニュース 2/27]北海道新聞:哲学の木 dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/sason/2-0047610.html…
  • [ニュース 2/27]読売新聞:切りたくて切ったわけでは…「哲学の木」伐採 www.yomiuri.co.jp/national/2016027-OYT1T50092.html…
  • [ニュース 2/26]東洋経済:本当の哲学者は「世の乱れ」を嘆いたりしない toyokeizai.net/articles/-/10617…

ロボット・人工知能

障害・手話

医療・生命科学

社会

国際

Afterwords

編集後記

今月の哲楽編集部では、現代哲学ラボ第2号をリリースして、ウェブサイトでインタビュー音源2件(永井均氏山内志朗氏)と、森岡正博氏によるインタビュー後記を公開、さらに日本外国人特派員協会で開催された福島の高校生による放射線比較実験の結果についての取材記事を掲載しました。

編集人は、哲楽編集を本業の広報の仕事の合間に続けているのですが、さらにその合間の時間を縫って、今月は哲学の雑誌に投稿するための論文を書いています。アカデミックな分野での研究活動を離れて久しいので、論文なんぞを書くモチベーションが再び沸いてきたことに驚いています(論文を書く時間があれば物を作りたいというタイプの研究者もいて、私はその一人でした)。

とはいえ、新しくわかったことを書き加えているうちに、論文は2万字を超えてしまいました。削らないと査読して頂けないので、書ききれないことは、エッセイの形にしてみようかな、と考えています。

編集人は、子どもの頃、ちょっと変わった環境にいました。聴覚障害と肢体不自由をもつすぐ上の兄と、主に表情の微細な変化とホームサイン(家庭内でのみ通じるジェスチャー)で会話して育ちました。おそらくこのために、言葉の意味を把握する方法が他の人とちょっと違うのではないかと、大分後になってから気がついたことが、哲学を学びたいと思ったひとつのきっかけでした。

特殊教育、哲学、情報科学といろいろな分野を渡り歩きながら、最終的に、手話のパラ言語(イントネーション・リズム・ポーズ・アクセントなどの抑揚)を分析して、手話通訳者のスキルの評価や学習に活かす研究に従事しました。手話のパラ言語は、体や手の動きの速度、単語と単語の間をつなぐ動きの時間調、表情の変化などを測定して特徴をつかむのですが、こうした特徴量の分類をして言語の意味と対応づけるのが、得意だったんです。慣習的な手話のネイティブではないのですが、兄と二人で互いに通じるホームサインを作っていたことが、このときの研究に役立ったのかもしれません。

そんなこんなでその後、ほとんど思いつきで哲学者インタビューを始めたのですが、最近になって、哲学者の声がもつ抑揚に自分が強く惹かれているんだな、と気がつきました。音声の抑揚の専門家がするように、哲学者の声の基本周波数を測ったりしなくても、心地の良い言葉の抑揚がどんなものかわかるものですし、 逆に、自分が心地よいと感じる言葉の抑揚は、基本周波数の変化量だけには還元できない気もします。

結局、手話でも音声でも、その人がこれまで世界にどう向き合ってきたか、その身体の構えを感じられる抑揚が私は大好きで、思い切り感化されながら、その人の輪郭を自分の体の内側から言葉でなぞることをやってきたのかもしれません。そういうふうにしか、たぶん、自分自身の境界が切り出せないのだなぁ、と。哲学者の声に浸り続けてきて、ようやく自分が何をやっているのか、分かり始めてきました。

哲楽で公開しているインタビューが、こんなふうに皆さん自身の問いを刺激して、意外な形で芽吹くようなことになったら嬉しいです。近くで哲学者の声を聴き続けた私に変化があったので、読者の皆さんにも何かあるかもしれませんよ〜。哲学者の声が一番魅力的に響くように編集してますし。もし何かあったら、ぜひ教えてくださいね!

田中さをり

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