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現代哲学ラボ 第2号
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「手話から見た哲学」構想
現代哲学の領域で哲学的な思索を発信している人たちが集い、次世代に哲学を伝える場を作り出す活動の記録を電子書籍版「現代哲学ラボ」としてお届けします。
2015年12月12日にホテル&レジデンス六本木で開催された「永井均氏に聴く:哲学の賑やかさと密やかさ」では、永井均氏をゲストにお迎えし、森岡正博氏が聞き手となりインタビューとディスカッションを行いました。「現代哲学ラボ」第2号は、この時に収録した音源をテキストとして再現し、図表と脚注により、詳細な解説を加えました。
哲楽編集部 編
語り:永井均・森岡正博
定価:360円
はじめに
今月の編集人Tweeter (@MIDAP) で通り過ぎていった哲学関連ニュースをまとめてお届け!2016年2月2日〜2月28日分
哲学
ロボット・人工知能
障害・手話
医療・生命科学
社会
国際
今月の哲楽編集部では、現代哲学ラボ第2号をリリースして、ウェブサイトでインタビュー音源2件(永井均氏、山内志朗氏)と、森岡正博氏によるインタビュー後記を公開、さらに日本外国人特派員協会で開催された福島の高校生による放射線比較実験の結果についての取材記事を掲載しました。
編集人は、哲楽編集を本業の広報の仕事の合間に続けているのですが、さらにその合間の時間を縫って、今月は哲学の雑誌に投稿するための論文を書いています。アカデミックな分野での研究活動を離れて久しいので、論文なんぞを書くモチベーションが再び沸いてきたことに驚いています(論文を書く時間があれば物を作りたいというタイプの研究者もいて、私はその一人でした)。
とはいえ、新しくわかったことを書き加えているうちに、論文は2万字を超えてしまいました。削らないと査読して頂けないので、書ききれないことは、エッセイの形にしてみようかな、と考えています。
編集人は、子どもの頃、ちょっと変わった環境にいました。聴覚障害と肢体不自由をもつすぐ上の兄と、主に表情の微細な変化とホームサイン(家庭内でのみ通じるジェスチャー)で会話して育ちました。おそらくこのために、言葉の意味を把握する方法が他の人とちょっと違うのではないかと、大分後になってから気がついたことが、哲学を学びたいと思ったひとつのきっかけでした。
特殊教育、哲学、情報科学といろいろな分野を渡り歩きながら、最終的に、手話のパラ言語(イントネーション・リズム・ポーズ・アクセントなどの抑揚)を分析して、手話通訳者のスキルの評価や学習に活かす研究に従事しました。手話のパラ言語は、体や手の動きの速度、単語と単語の間をつなぐ動きの時間調、表情の変化などを測定して特徴をつかむのですが、こうした特徴量の分類をして言語の意味と対応づけるのが、得意だったんです。慣習的な手話のネイティブではないのですが、兄と二人で互いに通じるホームサインを作っていたことが、このときの研究に役立ったのかもしれません。
そんなこんなでその後、ほとんど思いつきで哲学者インタビューを始めたのですが、最近になって、哲学者の声がもつ抑揚に自分が強く惹かれているんだな、と気がつきました。音声の抑揚の専門家がするように、哲学者の声の基本周波数を測ったりしなくても、心地の良い言葉の抑揚がどんなものかわかるものですし、 逆に、自分が心地よいと感じる言葉の抑揚は、基本周波数の変化量だけには還元できない気もします。
結局、手話でも音声でも、その人がこれまで世界にどう向き合ってきたか、その身体の構えを感じられる抑揚が私は大好きで、思い切り感化されながら、その人の輪郭を自分の体の内側から言葉でなぞることをやってきたのかもしれません。そういうふうにしか、たぶん、自分自身の境界が切り出せないのだなぁ、と。哲学者の声に浸り続けてきて、ようやく自分が何をやっているのか、分かり始めてきました。
哲楽で公開しているインタビューが、こんなふうに皆さん自身の問いを刺激して、意外な形で芽吹くようなことになったら嬉しいです。近くで哲学者の声を聴き続けた私に変化があったので、読者の皆さんにも何かあるかもしれませんよ〜。哲学者の声が一番魅力的に響くように編集してますし。もし何かあったら、ぜひ教えてくださいね!
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